未分類」カテゴリーアーカイブ

障害者自立支援法

スポンサードリンク

目的

2006(平成18)年から施行されている「障害者自立支援法」の目的は、同法第1条には以下のように規定されている。

「この法律は、障害者基本法の基本的理念にのっとり、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、児童福祉法その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児がその有する能力及び適正に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を山頂して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。」

 

実施される事業

障害者自立支援法によって実施される事業は大きく分けると、①自立支援給付と、②地域生活支援事業の2つである。

 

(1)自立支援給付には、①介護給付、②訓練等給付、③自立支援医療、④補装具がある。

 

(2)地域生活支援事業には、①相談支援、コミュニケーション支援、③日常生活用具の給付、④移動支援、⑤地域活動支援センター機能強化、⑥福祉ホーム、などの事業が例示されている。それぞれの市町村がニーズに応じて実施するとされている。「相談支援」は市町村が必ず実施しなければならない必須事業とされ、2006(平成18)年10月から、障害種別にかかわらず、相談支援事業は市町村に一元化された。市町村は地域自立支援協議会を設置することになっており、これらを含めた地域生活支援事業は義務的経費ではなく裁量的経費とされ、交付税によって財源を確保することとされた。

 

相談支援事業の主体は市町村であるが、指定相談支援業者や他の地方公共団体に委託することもできる。事業の内容は、①福祉サービスの利用援助、②社会資源を活用する支援、③社会生活力を高めるための支援、④ピアカウンセリング、⑤権利擁護のために必要な援助、⑥専門機関の紹介、⑦地域自立支援協議会の運営等である。

 

自立支援医療

障害者自立支援法における「自立支援医療」は、①これまでの18歳以上の身体障害者を対象としていた「更生医療」、②18歳以下の障害児を対象としていた「育成医療」、③精神障害者を対象としていた「精神通院医療」、の3つが1本化されたものである。これらの実施主体が市町村に一本化され、費用負担についても、原則一割負担となった。入院時の食費は利用者負担である。

 

3つの事業の内容は以下のとおりである。

①    更生医療の給付

18歳以上の身体障害者の日常生活能力の回復を図るため、医学的な方法によって身体の障害そのものを除去、あるいはその程度を軽減させるために更生医療の給付が行われる。

 

②    育成医療の給付

身体に障害のある児童、又は現存する疾患が、これを放置すれば将来障害を残すと認められ、確実な治療効果が期待できる児童に対して、厚生労働大臣又は都道府県が指定した医療機関で育成医療の給付が行われる。

 

③    精神障害者通院医療費公費負担制度

精神障害者に対する通院医療費の自己負担分を公費で負担する制度であり、「精神保健福祉法」第32条に規定されている。精神障害者が経済的な理由から医療を中断したり、服薬の中断を防ぎ、通院医療を確保するために作られた制度である。

 

 

利用者負担の仕組み

障害者自立支援法では、利用者負担の仕組みが変わった。これまでの障害者福祉は、両社の所得に応じた「応能負担」であった。しかし、新たな法律では、利用するサービス量(「応益負担」)と所得に応じた負担の仕組み(1割の定率負担と所得に応じた月額上限の設定)に変更された。

また、これまでは、障害種別によって異なっていた食費・光熱水費の実費負担についても見直され、3障害共通した利用負担の仕組みとなり、基本的には利用者負担となった。ただし、定率負担、実費負担のそれぞれに、低所得の方に配慮した軽減策が用意されている。

 

障害程度区分

高齢者介護の介護保険の「要介護認定」と同じく、障害者自立支援法でも、障害者福祉サービスの利用にあたって、障害者もどのくらいのサービスが必要かという「障害程度区分」を決定することになった。つまり、障害者でサービスを利用した人は、市町村に申請をし、障害程度区分認定調査を受けることになる。

 

この認定調査では、市町村は、介護保険の要介護認定調査項目(79項目)に、障害者の特性を把握するための27項目を加えた、合計106項目の調査を行う。これに、住居や介護者の状況等の「概況調査」を行う。この結果をコンピュータ判定により、介護に要する時間の長さに基づいて「一次判定」をし、「医師の意見書」や「特記事項」とあわせて、専門家らにより構成された「市町村審査会」の審査により「二次判定」が行われる。これに基づいて、市町村から障害程度区分が通知される

 

障害程度区分の基準はサービスの必要度の低い「区分1」から必要度の高い「区分6」までの6段階あり、これらにあてはまらない場合は「非該当」となり、サービスの必要性はないとされる。この障害程度区分の認定の後、市町村はサービスの利用意向調査を行い、認定結果と利用者の意向を判断して、サービスの支給決定を行う。

 

以上のことから、障害程度区分は区分1から区分6まであり、市町村審査会で判定がなされる。

 

なお、高齢者介護の解雇保険では、訪問調査と医師の意見書を基に「要介護認定」が行われる。この際には、「介護認定審査会」が開催される要介護状態の区分は、要支援の1,2、要介護の1から5となつている。要介護5は最も介護を要する状態となっている。また、要支援となった高齢者は「介護予防サービス」(予防給付)として、介護保険サービスを利用することになる。

 

概況

障害者自立支援法により、それまでの施設・事業は2012(平成24)年3月までに「新体系」に移行することになった。その目的は、①それまで身体、知的、精神障害と縦割りであったサービスの制度格差を解消し、障害の種別を問わず利用可能にすること、②施設で一日中生活する状態から、日中活動と居住のサービスを分離するとこにより、複数のサービスと組み合わせ「障害者の選択に基づく多様なライフスタイル」を可能にすること、③これまで不十分だった地域生活支援や就労支援など必要なサービスを創設すること、④国民にわかりやすいサービス名称に変更することである。つまり、障害種別ごとに分立した既存の施設や事業の体系を、大きく支援の機能に注目して、①日中活動系、②居住系(および③訪問系(または居宅系))に再編される。その結果、入所施設は、夜間や休日の支援と日中活動の支援を行う機能を分けて持つ。通所施設は、日中活動の支援を行うという具合である。具体的には以下の3つの系に整理されている。

 

(1)  日中活動系には、①介護給付として医療機関で機能訓練、療養上の管理、監護、介護及び日常生活上の世話を行う「療養介護」、施設で入浴や排せつ、食事の介護や創作的活動の機会を提供する「生活介護」、②訓練等給付として、身体機能や生活機能向上のための訓練を行う「自立訓練」、一定期間、就労に必要な知識や能力の向上のための訓練を行う「就労移行支援」、一般企業等での就労が困難な人に働く場を提供するとともに、知識及び能力向上のための訓練を行う「就労継続支援」、③地域生活支援事業として、「地域活動支援センター」がある。これは地域で自立した日常生活・社会生活を営めるよう、利用者が通い、創作的活動又は生産活動の機会の提供、社会との交流の促進、日常生活に必要な便宜の供与を行うものである。

 

(2)  居住系には、①介護給付として「共同生活介護(ケアホーム)」、「施設入所支援」、②訓練等給付として、「共同生活援助(グループホーム)」がある。

 

(3)  訪問系(居宅系)には、介護給付として、居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、行動援護、児童デイサービス、短期入所(ショートステイ)、重度障害者等包括支援がある。

 

 

更生医療の支払い決定実人員

障害者自立支援法に規定されている「自立支援医療制度」は、「心身の障害を除去・軽減するための医療の医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度」である。具体的には、次の3つの制度が含まれている。

①    統合失調症などの精神障害者で通院による「精神通院医療」、②身体障害者手帳を持つ障害者(18歳以上)の障害を除去・軽減する手術等の治療をする「更生医療」、③身体障害を持つ児童(18歳未満)の障害を除去・軽減する手術等の治療をする「育成医療」である。どれも利用者負担は原則1割となっている。

②    2008(平成20)年度の「社会福祉行政業務報告(福祉行政報告例)」をみると、身体障害者の更生医療の支払い決定実人員は215,767人であり内訳は入院69,639人(32.3%)と入院外146,059人(67.7%)となっている。障害別では人工透析治療とが含まれる「腎臓機能障害が1番多く、心臓機能障害が2番目となっている。

 

障害者の定義

障害者自立支援法の「障害者」の定義として障害者自立支援法の第四条には以下のように規定されている。

 

「第四条 この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者および精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条に規定する精神障害者(発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第二項に規定する発達障害者を含み、知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち十八歳以上である者をいう。

2 この法律において「障害児」とは、児童福祉法第四条第二項に規定する障害児及び精神障害者のうち十八歳未満である者をいう。」

 

身体障害者福祉法(1949(昭和24)年)、知的障害者福祉法(1960(昭和35)年 旧・精神薄弱者福祉法)、精神保健福祉法(略称)(1950(昭和25)年 旧・精神衛生法)は、いわゆる「三障害」の障害者福祉の基本的な法律である。また、児童福祉法は、障害児も含め、18歳未満の子どもを対象とした総合的かつ包括的な法律になっていることに注意しておきたい。

 

なお、「発達障害者支援法」は2004(平成16)年12月に成立した。「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害等をいう。これらの発達障害は、知的障害・精神障害ともされず、社会福祉の対象から漏れていたが、この発達障害者支援法がカバーすることになったのである。この法律を基に、全国に「自閉症・発達障害支援センター」が設置され、発達障害者の相談支援体制がつくられてきている。

 

 

三党連立合意

三党連立政権合意は、2009(平成21)年8月の自民党政権から民主党政権へのいわゆる「政権交代」に伴い、民主党と連立政権を組んだ社会民主党と国民新党の三党の政策に関する合意である。

 

この合意文書の「5. 年金・医療・介護など社会保障制度の充実」の中に、障害者に対するものとして、次のように記載されている。「『障害者自立支援法』は廃止し、『制度の谷間』がなく、利用者の応能負担を基本とする総合的な制度をつくる。」

 

障害者自立支援法を「改正」ではなく、「廃止」とされたのは、障害当事者からの障害者自立支援法の廃止運動が背景にある。特に2008(平成20)年10月全国8地裁で、障害を理由とした支援サービスの1割を強要する「応益」負担は、生存権や幸福追求権の侵害であり、憲法に違反すると主張して提訴された。障害者が生きていくために必要な福祉サービスを障害者の「利益」とみなし、1割の利用者負担、つまり、利益に応じて費用を負担する「応益負担」(国の表現では「定率負担」)が求められることに反発したのである。なぜなら、応益負担の仕組みでは、障害が重くなり、介護が必要になればなるほど、利用者負担が増加することになるからである。

 

それに対して、「応能負担」は、負担する能力、つまりその人の所得に応じて、利用者負担の金額を増減させる。つまり、低所得者であれば、少ない費用負担、高額所得者であれば高い費用負担をするので、無理な費用負担を予防することができる。

 

なお、の政策合意を得て、①サービスの利用者負担を応能負担とする障害者総合福祉法(仮称)を制定するために、2009(平成21)年12月に内閣に「障がい者制度改革推進本部」、2010(平成22)年1月から「障がい者制度改革推進会議」が開催されている。②新たな制度ができるまでの間、2010(平成22)年4月から、低所得(市町村民税非課税)の障害者等は、福祉サービス及び補装具に係る利用者負担が無料となっている。

 

なお、この政策合意には、「消費税率の据え置き」「高校教育を実質無償化」「子ども手当」の創設などが記載されており、大きな議論となった。

 

 

費用負担

障害者自立支援法の第六章の第92条から第96条で、市町村、都道府県、国の費用負担について規定されている。

 

それによれば、市町村は自立支援給付の障害福祉サービスにかかった費用負担をする。それに対して、都道府県は、25/100、つまり1/4の負担をする。また、国は50/100、つまり1/2の負担をするとされている。整理すると、国が2/4、都道府県が1/4、市町村が1/4の負担をすることになる。

 

なお、この自立支援給付等の障害福祉サービス費等は、国の「義務的経費」とされており、障害福祉サービスが利用され、市町村が支出した場合は、国や都道府県は必ず費用を負担しなければならない。それまで予算の制約が厳しかった障害者福祉予算に対して、いわば原則1割の利用者負担(応益負担・定率負担)を導入することと引き換えに、障害者福祉サービスの予算による制約を取り去ったといえる。

 

ただし、注意が必要なことは、コミュニケーション支援事業等をたくむ「地域生活支援事業」は義務的経費ではなく「裁量的経費」とされている。つまり、地域生活支援事業に関する市町村の支出については「予算の範囲内において」、都道府県は1/4以内を、国は1/2以内を補助すると規定されている。したがって、地域生活支援事業について、国や都道府県の費用の補助の程度は予算の制約を受けることになっている。

 

この地域生活支援事業は、利用者負担は実施自治体で設定できるため、無料にすることも、応益負担にすることも可能である。義務的経費の場合と対比すると、1割の応益負担を導入しないので、裁量的経費として、予算の制約を持たせているようである。

 

 

利用者負担

利用者負担の在り方をめぐっては、以前より、大きく応能負担と応益負担の2つの考え方がある。

 

応能負担は所得に応じて負担額を決めるものである。応益負担(国は「定率負担」ともいう)は、利用したサービスの量に応じて負担額を決めるものである。

 

厚生労働省としては、障害者自立支援法は、介護保険と統合することを狙っていたたため、障害者福祉をできるだけ介護保険制度と同様の仕組みにしようとした。そこで、介護保険と同じく福祉サービスの利用時には1割(10%)の利用者負担もつまり、応益負担が導入されたのである。

 

しかし、応益負担は、①低所得・低年金の障害者には、費用負担が重くなる。また、②重度の障害者程、生活問題が厳しく、いくつもの福祉サービスをたくさん利用しなければならない障害者にとっても、費用負担が重くなる。したがって、低所得や多くの生活問題を抱えた障害者、つまり、より深刻な問題を抱えた障害者を、福祉サービスから排除する機能が、応益負担の仕組みにはある。そのため、多くの障害者団体から応益端をやめ、応能負担にするように運動があったのである。2009年の政権交代に伴って、利用者負担は応能負担の問題がどりあげられ、応能負担の仕組みに変えていくことが政策方針として示されている。ただし、それまでの間の対応として、1割の応期負担を原則としつつ、「所得に応じた負担上限月額の設定」、つまり低所得者への負担の軽減策が強められてきている。

この利用者負担については、2013(平成25)年4月からの障害者総合支援法についてもよく調べておきたい。

 

 

地域生活支援事業

地域生活支援事業は、障害者一人一人に個別に給付することが難しく、または、障害者が暮らしやすい社会をつくるための事業であり、「市町村地域生活支援事業」「都道府県地域生活支援事業」「特別支援事業」の3つに分類される。

 

市町村事業には、①「相談支援事業」(「成年後見制度利用支援事業」を含む)、②「コミュニケーション支援事業」、③「日常生活用具給付等事業」、④「移動支援事業」、⑤「地域活動支援センター機能強化事業」、⑥福祉ホーム事業等を含む「その他事業」がある。①~⑤は「必須事業」である。なお、②に手話通訳者・要約筆記者派遣事業、手話通訳者設置事業、点訳・音声訳等による支援事業、⑥の社会参加促進事業に手話の「奉仕員養成研修事業」が含まれる。

 

次に都道府県事業には、⑦「専門性の高い相談支援事業」(「発達障害者支援センター運営事業を含む)、⑧「広域的な支援事業」、⑨「サービス・相談支援者、指導者育成事業」、⑩「その他の事業」がある。⑦と⑧の事業は必須事業である。なお、⑨に手話通訳者養成研修事業や盲ろう者通訳・介助員養成研修事業、⑩の「情報支援等事業」に、手話通訳設置事業、字幕入り映像ライブラリー事業、盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業等が規定されている。

 

特別支援事業には事業の実施が遅れている地域の支援を行う事業、実施水準に格差が去られる事業の充実を図る事業等がある。

スポンサードリンク