エンパワメント
障害者福祉の分野でも重視されるようになった「エンパワメント」の考え方は、障害のある人自身が自己決定や問題解決ができるように自らを力づけていくものであり、そのための支援のあり方や社会のあり方が問われている。
保健医療福祉実践や企業活動におけるエンパワメントには、人は誰もがすばらしい力を持って生まれ、生涯にわたりそのすばらしい力を発揮し続けることができるという前提がある。 そのすばらしい力を引きだすことがエンパワメント、ちょうど清水が泉からこんこんと湧き出るように、一人ひとりに潜んでいる活力や可能性を湧き出させることがエンパワメント(湧活)である。
医療や福祉などの実践では、一人ひとりが本来持っているすばらしい潜在力を湧きあがらせ、顕在化させて、活動を通して人々の生活、社会の発展のために生かしていく。また、企業などの集団では、社員一人ひとりに潜んでいる活力や能力を上手に引き出し、この力を社員の成長や会社の発展に結び付けるエネルギーとする。これが組織、集団そして人に求められるエンパワメント(湧活)である。
エンパワメントには3つの種類がある。セルフ・エンパワメント(自分エンパワメント)、ピア・エンパワメント(仲間エンパワメント)、コミュニティ・エンパワメント(組織/地域エンパワメント)である。これらを組み合わせて使うことがエンパワメントの実現に有効であり、「エンパワメント相乗モデル」という(
エンパワメントとはアメリカにおける公民権運動との関わりの中で、ソーシャルワークの分野に取り入れられた理念である。1976(昭和51)年にソロモン(Solomon,B.)が「黒人のエンパワメント:抑圧されている地域社会によるソーシャルワーク」を著し、ソーシャルワーク分野でのエンパワメントの重要性を指摘した。
社会的に不利な状況に置かれた人々の自己実現をめざしており、その人の弱さ、欠点やマイナス面に着目して援助するのではなく、その人の強さ、長所、プラス面に着目して援助する考え方である。そのような援助方法により、本人が自分の能力や調子に気づき、自分に自信を持てるようになり、問題や課題に主体的に取り組めるようになることを目指した援助の理念・方法である。
従来の社会福祉、障害者福祉、リハビリテーションは、専門職が評価しプログラムを決め、サービスの対象者は専門職の方針に従わなければならないというような雰囲気が強かった。このような専門職主導のサービス提供方法を、比喩として「医学モデル」と言われる。
障害者福祉の分野でも重視されるようになった「エンパワメント」の考え方は、障害のある人自身が自己決定や問題解決ができるように自らを力づけていくものであり、そのための支援のあり方や社会のあり方が問われている。