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ノーマライゼーション2015

以下は2015年1月7日勉強会資料分です

「ノーマライゼーション」とは、障害者や高齢者など社会的に弱い立場にある人々が社会の中にいるのが通常の社会であり、一般社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであり、ともに生きる社会こそノーマルな社会であるという考え方である。

1999(平成11)年版「障害者白書―ノーマライゼーションの世界的展開―」において、「現在の障害者施策の基本理念の一つであるノーマライゼーションの思想は1950年ごろにデンマークで生まれたものであるが、誕生から半世紀を過ぎた今日、この理念は国際社会を構成する世界各国において広く認められ、実現の水準に格差はあるものの、すべての国が障害者施策の目標をここに置いていると言っても過言ではない」と書かれている。

以上のように、ノーマライゼーションの理念は、1950年代前半にデンマークにおける「知的障害者の親の会」から、その当時、知的障害があると一生施設で生活するのが当然のように行われてきた福祉について疑問が出され、知的障害を持っていても家族と一緒に生活することができるように国に訴えたことから、デンマークの障害者行政担当官であったバンクーミセルケンが、1959年(昭和34)年に制定された「知的障害者等福祉法」において、「知的障害者の生活を可能な限り通常の生活に近づけるようにする」と定義づけたことに発している。のちにバンクーミセルケンは「ノーマライゼーションの父」と言われるようになった。この「知的障害者等福祉法」は制定された年により「1959年法」とも言われる。

その後、1967(昭和42)年にスウェーデンにおいて制定された「知的障害者援護法」にもノーマライゼーションの理念が規定された。その制定にかかわったベンクト・ニィリエ(「ニルジェ」と訳されることもある)は1969(昭和44)年に「ノーマライゼーションの原理」をまとめた。その中でニィリエはノーマライゼーションを「すべての知的障害者の日常生活や条件を、社会の通常の環境や生活の仕方にできるだけ近づけるようにすること」と定義し、ノーマライゼーションを考える時の具体的な視点として、ベンクト・ニィリエは以下の8項目を挙げた。

① 1日のノーマルなリズム
② 1週間のノーマルなリズム
③ 1年間のノーマルなリズム
④ ライフサイクルでのノーマルな経験(ノーマルな成長過程)
⑤ ノーマルな要求の尊重
⑥ 異性との生活(両性のいる生活)
⑦ ノーマルな経済的状態(ノーマルな経済生活)
⑧ ノーマルな生活環境(ノーマルな住環境)

のちにニィリエは「ノーマライゼーションの育ての父」と呼ばれた。

このように、デンマークやスウェーデンのノーマライゼーションの考え方は、障害者の生活環境や社会福祉制度の改善を重視してきたのに対して、アメリカ・カナダでの普及に尽力したW.ヴォルフェンスベルガーは、ノーマルな生活というのは国や地域によって異なることを重視し、環境整備と共に、障害者自身が「社会的な役割」を獲得し、それによって障害者の社会的なイメージを高めるよう訴えた。

この理念の影響を受け、アメリカやカナダにおいては、ヴォルフェンスベルガーがノーマライゼーションの普及に努めた影響で知的障害者や精神障害者の大型施設を解体し、社会からの隔離や分離をなくそうとしてきた。

ヴォルフェンスベルガーはドイツに生まれたが、アメリカに移住し、心理学と特殊教育の博士号を取得した研究者である。北欧で生まれたノーマライゼーションの思想を英語圏及び国際的に普及させる上で大きく貢献した。理念として抽象的に語られていたノーマライゼーションの思想を実際のサービス評価に具体化し、「価値ある社会的な役割の獲得(ソーシャルロール・ヴァロリゼーション)」を提唱した。

日本においては、「ノーマライゼーション」は、障害者に関する長期計画、障害者に関する新長期計画、障害者基本計画、障害者プランなど、高齢者や障害者を含むすべての人々の社会福祉の理念として位置付けられている。公共施設のバリアフリー、障害者施設の脱施設化と在宅福祉サービス、障害児教育における統合教育等が進められていくようになった。

1990年8月に日本の日欧文化交流学院でバンクーミセルケンが行った最終講義において、以下のような内容を話している(花村春樹『ノーマライゼーションの父』、ミネルヴァ書房、1996年、193頁)。
 「障害の状況によっては、施設に入居する形をとらなければならない場合もあります。しかしその場合でも、かってのように1,000人も一緒に生活するような施設のあり方は、とんでもない誤りです。そのような施設に代わる新しいものが必要です。それはグループホームあるいは少人数の居住施設です。施設の小規模化、脱施設化という言い方もできるでしょう。」

メイスは、ユニバーサル・デザインの提唱者である。それまで障害者に利用できるように「バリアフリー」が提唱されてきたのに対して、ユニバーサル・デザインは障害者だけでなく、高齢者や妊産婦等、そして健常者も含めた、すべての人に使いやすいデザインの製品や建築物、生活環境を作っていくことを設計の方針としたものである。

このようなノーマライゼーションやユニバーサル・デザインの理念が日本でも普及していくなかで、公共施設のバリアフリー化や障害者施設の脱施設化と地域生活、障害児教育における統合教育等がすすめられていくようになった。

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