ノーマライゼーションに関して
ノーマライゼーションの考え方は、デンマークで1950年代に、施設に入所した知的障害者の親の会が、障害を持っていても家族と一緒に生活することができるよう国に訴えたことから、バンクーミセルケンらの努力により、障害者に可能な限りノーマルな生活状態に近い生活を作り出すというノーマライゼーションの理念をはじめて規定した「1959年法」が成立した。バンクーミセルケンは「ノーマライゼーションの父」と言われるようになった。
その後、スウェーデンでも、ニィリェがノーマライゼーションの8つの原理として、①1日のノーマルなリズム、②1週間のノーマルなリズム、③1年間のノーマルなリズム、④ノーマルな成長過程、⑤ノーマルな要求の尊重、⑥両性のいる生活、⑦ノーマルな経済生活、⑧ノーマルな住環境を挙げ、これらの原理にそって、ノーマライぜージョンがスウェーデン、そして広く北欧で実践されるようになった。こうして、ニィリェはノーマライゼーションのン考え方を発展させて、「ノーマライゼーションの育ての父」と呼ばれた。
このように、デンマークやスウェーデンのノーマライゼーションの考え方は、障害者の生活環境や社会福祉制度の改善を重視してきたのに対して、アメリカ・カナダでノーマライゼーションの普及に尽力したヴォルフェンスベルガーは、ノーマルな生活というのは国や地域等によって異なることを重視し、環境整備と共に、障害者自身が「社会的な役割」を獲得し、それによって障害者の社会的なイメージを高めるよう訴えた。
一方、メイスは、ユニバーサル・デザインの提唱者である。それまで障害者に利用できるように「バリアフリー」が提唱されてきたのに対して、ユニバーサル・デザインは、障害者だけでなく、高齢者や妊産婦等、そして健常者も含めた、すべての人に使いやすいデザインの製品や建築物、生活環境を作っていくことを設計の方針としたものである。
このようなノーマライゼーションやユニバーサル・デザインの理念が日本でも普及していくなかで、公共施設のバリアフリー化や障害者施設の脱施設化と地域生活、障害児教育における統合教育等が進められていくようになった。