月別アーカイブ: 2013年11月

手話通訳者の理念と仕事Ⅰ

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手話通訳者の理念と仕事Ⅰ

1. 手話通訳者の評価過程は「手話通訳時に発生した課題の整理と社会化」となる。

2. 手話通訳者の自己覚知と危機管理について

(1) 自分の通訳力量や手話通訳者の身分形態による社会的条件を十分理解しておく。
(2) 手話通訳者が過重な業務などを自己コントロールすることによって、ある程度は健康問題の発生を防ぐことができる。
(3) 手話通訳制度の改善や良好な手話通訳条件整備に向けた提言を行う。

3. 手話通訳技術過程の翻訳技術過程は「理解したメッセージを保持し、再構成する過程である」となる。
4. 手話通訳者の役割には聴覚障害者への様々な情報提供と健聴者、関係機関に対しての聴覚障害者に関する情報提供があります。具体的には聴覚障害者が主体的に自分の問題と関わり、その解決の糸口をさぐるために必要な情報を提供することや講演通訳場面における事前打ち合わせ等、通訳行為に入る前や最中にコミュニケーション障害の要因について相手方に説明すること等があります。
5. 手話通訳過程や場面における手話通訳の環境・条件について

(1) 客体的条件には物理的、心理的、社会的な条件が存在している。
(2) 手話通訳場面における音響、照明、距離、障害物等は物理的条件である。
(3) 心理的・社会的諸条件には手話通訳者観や社会構造、法制度などがある。

6. コミュニケーションをお互いが理解し合い、人間関係を作っていく過程として捉え、対象者の伝えたいことなど通訳過程を通して理解し、受容する力や対等なコミュニケーションを成立させるための情報提供が求められます。また、不平等なコミュニケーション関係からくる誤解を除き、相互理解を成立させるための調整力と対象者の人間関係の広がりや良好なコミュニケーション関係を築いていく力が求められます。
7. 手話通訳者の職務について

(1) 手話通訳者は、手話通訳を担うに当たって、自分の通訳力量や手話通訳者の身分形態による社会的条件などを十分理解しておく必要がある。
(2) 人には、年齢、性別や社会的立場・関係などの属性があり、コミュニケーション能力には個人差があることを理解すべきである。
(3) 手話通訳場面において、相手に正しく情報を伝えるためには、その人の言語能力などを考慮すべきである。

8. 手話通訳者の職務について

(1) 手話通訳の対象となるのは聴覚障害者と健聴者である。
(2) 手話通訳対象者には年齢、性別や社会的立場・関係などによるコミュニケーション能力の個人差があることを考慮すべきである。
(3) 個人やその人格の尊厳、基本的人権の尊重は専門職に共通する基本的な倫理である。

9. 手話通訳実践に必要な力や姿勢について

(1) 対象者の主体性を尊重しながら、対象者の意図するコミュニケーションの目的が達成されるよう、必要な情報を適宜提供できる力が必要である。
(2) 自分の通訳力量や手話通訳者の社会的条件などを充分理解しておく必要がある。
(3) 個人やその人格の尊厳、基本的人権の尊重という専門職に共通する基本的な倫理観が必要である。

10. 手話通訳時の翻訳技術について

(1) 異なる言語間の翻訳をする際、まずメッセージの理解をする能力が基盤となる。
(2) 翻訳にあたっては、聴覚障害者に応じた手話を判断する能力とそれを実践する技術が必要である。
(3) 手話通訳時には、表現されたメッセージを受容してから多言語で表現するまでの一連の過程を繰り返し、しかも同時に重ねて行っている。

11. 手話通訳者の職務(情報保障)について

(1) 聴覚障害者のコミュニケーション障害の要因について相手方(健聴者サイド)に説明したり、講演通訳場面に事前打ち合わせを行う等各場面におけるコミュニケーションをより円滑化するための情報提供を行う。

(2) 聴覚障害者問題や聴覚障害者福祉に関わる様々な情報提供、関係機関への連絡調整的な情報提供を行う。

(3) 聴覚障害者本人が自分のかかえている問題と向き合い、聴覚障害者が主体的に自分の問題と関わりその解決の糸口をさぐるための情報提供を行う。

12. 手話通訳実践について

(1) 対象者のコミュニケーション要求や感情などを手話通訳過程を通して理解し、受容する力が必要である。

(2) 聴覚障害者の社会参加や自立を支えるために技術や知識を駆使する姿勢が大切である。

(3) 手話通訳の予期せぬトラブルに対し冷静かつ適切に対応できるかどうか、自分の手話通訳力量を把握しておく必要がある。

13. 手話通訳時の翻訳の流れについて

・メッセージの受容→メッセージの理解→メッセージの保持→メッセージの再構成→メッセージの表出

14.(財)全日本聾唖連盟が、1985(昭和60)年に厚生省(当時)に提出した「手話通訳制度化検討報告書」に記述されている「手話通訳士」としての責務としては

(1) 職務を行うにあたっては、個人の人権を尊重し、その身上に関する秘密を守らなければならない。

(2) 自発的に職務に関する研修に励み、資質向上に努める。

(3) 職務を通して聴覚障害者の社会参加と平等の実現に努める。

14. 手話通訳者養成事業の開始について、1997(平成9)年、国は手話奉仕員養成事業の見直しに着手し、1998(平成10)年、手話通訳者養成事業のカリキュラムを策定し、各都道府県に通知しました。

15.1989(平成元)年に発足した厚生大臣(当時)認定手話通訳士試験によって、手話通訳士という資格が誕生しました。これは現在のところ、業務独占の資格ではないので、手話通訳者と手話通訳士との業務に明確な線引きはありません。

16.手話話通訳業務指針作成委員会のまとめの中で、手話通訳士の職務は、聴覚障害者のコミュニケーション保障と情報保障とに整理されています。情報保障には、情報提供の三つの側面があるとされています。

(1) 各場面におけるコミュニケーションをより円滑にするための情報提供。
(2) 聴覚障害者が主体的に自分の問題と関わり、その解決の糸口を探るために必要な情報提供。
(3) 関係機関への連絡調整的な情報提供。

17.厚生省(当時)は、1970年度から手話奉仕員養成事業、1973年度から手話通訳者設置事業、1976年度から手話奉仕員派遣事業を開始しました。
 これらの事業は、いずれも実施主体である都道府県に対し、厚生省が補助する形で開始されましたが、事業内容が都道府県の裁量にまかされたこと、また国の補助制度が補助基準の範囲で複数の事業を選択実施するいわゆるメニュー事業であったことなどから、都道府県により事業予算額等に大きな差が生まれ、制度に大きな全国格差を生み出すことになりました。
 国はこれら養成事業の見直しと改善に着手し、1998年度、手話奉仕員養成及び手話通訳者養成等のカリキュラムを策定し、各都道府県に一斉通知しました。

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