障害者福祉における理念やキーワード例
1. 生活の質(QOL)
従来のリハビリテーションは日常生活動作(ADL)の向上を目指してきたが、最近は、生活の質(QOL)を高めることを目標にするようになった。そのためには日常生活や社会生活のあり方を自らの意思で決定し、生活の目標や生活様式を選択できることが前提条件である。身体的、精神的、社会的、文化的に、満足できる豊かな生活を営めることを意味する。
2. インテグレーション
「統合化」と訳され、障害のある人と障害のない人とがあらゆる機会や場でともに活動し、協力していくことを意味する。教育においては、「統合教育」を意味し、障害児が通常の学校や学級に籍を置き、すべての教育活動を障害のない児童とともに行うことを意味している。
3. メインストリーミング
アメリカでは、1970年代からインテグレーションではなく、メインストリーミングという用語を使うようになった。メインストリーミングとは「主流に入る」という意味であり、障害児を一般の学校に入れることなどを意味している。
4. インクルージョン(社会的包摂)
この用語はニュージーランドにおいて使われ始めたが、1989年に同国にて制定された教育法において、それまでの障害児のメインストリーミングから「インクルーシブ教育」へ転換すると明記された。障害児と障害のない児童を一緒にしようとするよりも、最初から、さまざまな人がいる社会が当然なのだから分けて考えないで、そもそもすべての人を対象に考えるという理念である。近年では、障害者や貧困者、少数民族等の社会的少数者(マイノリティ)が、社会から排除されないようにすることを意味するようになってきている。
5. 機会均等化
社会の一般システム、例えば物理的、文化的環境、住宅と交通、社会・保健サービス、教育と労働の機会、スポーツやレクリエーションの施設等を含む文化・社会的生活をすべての人々に利用可能にすることである(国連・障害者に関する世界行動計画)。
6. 完全参加と平等
1981年の国際障害年のテーマであった。障害者が社会のあらゆる分野での参加が保障され、平等な社会が実現することを目指している。
7. エンパワメント
社会的に不利な状況におかれた人々の自己実現を目指しており、その人の弱さ、欠点やマイナス面に着目して援助するのではなく、その人の強さ、長所、プラス面に着目して援助する。そのような援助方法により、本人が自分の能力や長所に気づき自信をもてるようになり、問題や課題に主体的に取り組めるようになることを目指した援助の理念・方法である。
8. 生活モデル
医療や従来からの社会福祉の援助は、対象者の病理、弱さ、マイナス面、問題点に着目してきたが、これを「医学モデル」という。このように専門家が主導する援助方法である「医学モデル」に対置する概念が「生活モデル」である。対象者の生活状況や社会生活を環境との関係の中で全体として把握し、対象者の主体性、選択性を尊重した援助方法の考え方を「生活モデル」という。
9. 社会生活力
「社会リハビリテーションは社会生活力を高めることを目的とする」と定義されたことから生まれた用語である。社会生活力とは、さまざまな社会的な状況の中で、自分のニーズを満たし、社会参加を実現する力のことである。
10. パートナーシップ
従来の訓練や指導は、指導員が訓練生に対して上から下に教えがちであったり、福祉サービスの窓口の人が福祉サービスを受ける人に対して横柄な態度をとりがちであったといわれる。援助者とサービス利用者は上下関係ではなく、平等な関係に立つという視点が「パートナーシップ」である。