障害者権利条約について
国連では、1971(昭和46)年に「知的障害者の権利宣言」、1975(昭和50)年に「障害者の権利宣言」を採択し、1981(昭和56)年は国際障害者年、1983(昭和58)年から「国連障害者の十年」など障害者の権利を確立すべく積極的な取り組みをしてきた。そして、2006(平成18)年12月の国連総会で法的拘束力を持つ「障害者権利条約」が採択され、2008(平成20)年5月に発効した。ただし、日本は2007(平成19)年9月に署名したが、批准はまだしていない。条約は憲法よりも下位にあるが、法律よりも上位にある。つまり、条約に批准すれば、条約に合わせて法律を整備し直さなければならない。
さて、障害者権利条約では、一般原則として、固有の尊厳、個人の自律と自立の尊重、差別されないこと、社会参加、機会の均等などを規定し、締結国に一般的義務として、障害者に対する差別となる既存の法律、規則等を修正・廃止すること、個人、団体・民間企業による障害を理由とした差別を撤廃するための措置をとることなどが規定されている。
特に、障害者への差別解消に必要な「合理的配慮」を求めていることが重要である。障害者権利条約の第2条で「『合理的配慮』とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義づけられている。このように、合理的配慮は、条約として障害に適切な配慮を求めるものである。ただし、「均衡を過度の負担を課さないもの」という条件が付記されており、適切な配慮を求める為の運動や努力が必要になってくるだろう。日本も早期に障害者権利条約に批准し、これらに関する国内法令の整備を図ることが急務の課題として指摘されている。