第17回手話通訳技能認定試験実技試験聞き取り通訳試験2005年(平成17年)

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第17回手話通訳技能認定試験実技試験聞き取り通訳試験2005年(平成17年)

聞き取り通訳試験(問題)

第1問 テーマ「海の想い出」
 
 おととしの夏、浜辺で拾った、小さな貝殻。白っぽくて、光の加減で少しピンクや黄色にも見える。わたしは、これを手のひらに載せて、じっと見つめることがある。
 わたしの家族は、夫と子ども。男の子が二人いて、わたしはパートで働いている。夫は会社に勤め、家事もいろいろ手伝ってくれている。
 それでも、女のわたしは子どもを産み育て、食事の用意をし、電気・ガス・水道などの支払いから、親せき付き合い、町内会のこと、子どもの学校関係など、毎日を目まぐるしく過ごしてきた。
 十年前になるが、下の子が小学三年のときだった。夏休みに家族で海に行った。
 二人とも沖で元気に泳ぎ、そろそろ浜にもどろうとしたとき、下の子の足がつってしまい、危うくおぼれてしまうところだった。
 それ以来、海には行かなくなった。
 それが、おととし、なぜか、下の子が海に行きたいと言いだし、夏休みにまた海に来たのだ。
 海で遊んでいた子どもたちに、夫が「怖くないか」と聞いたそうだ。下の子は、「平気さ。海は好きだよ」と言ったそうだ。わたしは、帰る日の朝、もう一度この砂浜を歩きたいと思い、夫と散歩した。そのとき見つけたのがこの貝殻だ。
 今、こうして貝殻を見つめていると、子どもたちの成長に感謝する思いで、胸が熱くなる。
 山ほどの家事や、終わることのない日常のあれこれさえも、貝殻の彩のように、美しさを添えてくれているように思える。

第2問 テーマ「愚痴をこぼさないプラス思考」

 アメリカ大陸を4700キロメートル歩いて横断するレースがあります。名付けて「トランスアメリカ・フットレース」。一日に74キロメートル歩いて、それを64日間続けてやっと横断する、もちろんミシシッピ川もロッキー山脈もただひたすら歩いて越えるという想像を絶する過酷なレースです。
 1993年の6月のレースには13人の参加者がいました。その中に日本人が一人。この日本人はこの時が三度目の挑戦でした。スタート時点では13人でしたが、途中で脱落する人が続出。
 リタイアした人は「ああこんなひどい嵐の日じゃもう歩けない」とか「ああ砂漠で気温が50度もある。暑くて歩けたものではない」と、ちょっとでも愚痴を言う人全員がギブ・アップでした。
 残った人たちというのは、何があってもさっさっさっと歩いて、5センチメートル先が見えない嵐でも、「ああ嵐だなあ。ずっと続くわけでもあるまい」と言い、砂漠がジリジリ焼けて50度でも「ああ砂漠は暑くて広いなあ」って、笑ってしまうほどで、絶対に愚痴は言わない。「まあそういうときもあるわ」って受け入れてゴールインしたのが6人。三度目の挑戦だった日本人もその中に入っていました。

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